「本当の自分」を見せる必要はない
芥川龍之介は「あらゆる社交はおのずから虚偽を必要とするものである」と述べている。
人間関係において、どうしてもウソをつかなくてはならにという場面があることは本当であるし、またそうしなければ人間関係を円滑に築くことなどできない。
奥さんに対して愛情がなくなったとしても,それでも毎日「お前はいつまでもきれいだ」と言っている旦那さんがいるとする。
この旦那さんは,微塵も思っていないことを言っているが,このことの何が悪いのであろうか。
奥さんも褒められないよりも褒められた方がうれしいに決まっているし,「いやだわ,あなた!」などと言いつつもまんざらではないだろう。
能力がない部下に「お前は将来性があるんだから,ふてずに頑張るんだぞ!」と声をかけ続ける上司がいるとする。
当然その部下に将来性など微塵もないのだが,この上司は悪い上司だろうか。
私は決してそうは思わない。
極端なことを言えば,嘘をついてもいいのである。
むしろ,嘘つきでなければならないのだ。
有吉さんもウソの重要性についてこのように述べている。
本当の自分ですか?
本当の自分なんかいらないと思ってます。
本音なんかいらないと思ってます。
ずっとウソつき通すっていう。
だから、それが”本当”なんですかね。
(「サラリーマン芸人。」双葉文庫、134ページ)
上手なウソをつくことは,人付き合いにおいて絶対不可欠なもの。
だkら「本当の自分」などというものはなくていいし,見せなくてもいいのである。
人間関係の上手さのことを心理学用語で「社会的スキル」という。
そして,その社会的スキルを測る項目には「嘘をつくのが上手」という項目があるのである。
カリフォルニア州立大学のロナルド・リッジオ氏も,嘘を上手につくことが人付き合いを円滑にする基本だと言及している。
上司に退屈な話をされても感動しているような目で、興味深いと思っているフリをして聞いてあげよう。
本当は行きたくもない飲み会にも,喜んで参加しよう。
微塵も思っていないことでも「あなたが好きだ」と言ってあげよう。
そうやって嘘をつき続けることが人間関係をうまく気づくためのテクニックである。
これを自然にできるようになることが大切だ。
嫌いな人にも「あなたのことがとても好き」と繰り返そう。