「死」を意識することでポジティブになれる
はらいかわてつやです。
◎「死」について考えること
自分の「死」について考えるということは、あまり良いことではないとされている。
誰だって死ぬのは怖いし嫌に決まっているので、死について考えることは気持ちを暗くさせるだけだということだろう。
しかし、本当にそうだろうか。
「命がある限り精一杯生きよう」
「生きているうちに何か成し遂げたい」
「毎日を大切にしよう」
「人に優しく接しよう」
という前向きな考えも浮かんでくるのではないだろうか。
死について考えることは、逆転の発想で、前向きでポジティブな考えを生み出すきっかけになるはずだ。
アメリカのケンタッキー大学の心理学者であるネイザン・デワール氏は、205名いる学生のおよそ半分に自分の「死」について考えさせた。
自分が死んだらどうなるのか、周りの人はどう感じるのかなどを考えてもらったのだ。
そして、残りの半分の学生には、「歯の痛み」に考えてもらった。
デワールは次に、アルファベットが欠けた単語を完成させるというテストを行わせてみた。
たとえば、「JO?」というカードを見せて欠けた部分のアルファベットを補わせたのだ。
すると、このテストの前に自分の死について考えたグループは、ポジティブな単語である「JOY」という単語を思いついた人が多く、歯の痛みについて考えたグループは「JOG」という中立的な単語を思い浮かべた人が多かったという。
この結果をうけて、デワールは「自分の死について考えると、バランスをとるために前向きなことを考えるようになる」という仮説をたてた。
◎前向きな生き方
ケネディ大統領が、人よりもポジティブな人間だった理由は、たぶん自分が常に死を意識していたからだろう。
ケネディは、幼いころから病弱だったが、あまり弱音をはかなかった。
そんなケネディが、親しい友人に以下のように悩みを話している。
チクショウ、俺の腸は何か変だ。小便が血だらけだ。3日間で18回の浣腸だ。
(親友レム・ビリングズヘの手紙。1934年6月19日)
ケネディが生涯患った病気はとても多く、十二指腸潰瘍や原因不明の発疹、激しい腰痛や薬の
副作用による腰椎異常などさまざまだ。
学生時代のケネディは、「残り2000のケネディ」と呼ばれていた。
そのあだ名は、ケネディの白血球の数が3500しかなく、1500になったら死んでしまうと宣告されていたからだ。
母親であるローズは、ケネディが暗殺されたときに「これでやっと息子は楽になれた。今までいろいろな病気で苦しんできたのだから」と話したという。
「息子は病気のデパート」とローズは話しており、その言葉のとおり生涯病魔と闘い続けていたのである。
だからこそ、あんなにも前向きでポジティブに生きられたのかもしれない。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉があるが、病弱な体にも強い精神力は宿るのである。
むしろ、病弱だからこそかえって、強い鋼のような精神力が宿るのかもしれない。
人間は死んだきで臨めば、どんなことでもできる。
もし、仕事に全くやる気が出ないのなら、「死」について考えてみよう。
そうすれば、前向きでポジティブな考えがどんどん湧き出てくるはずだ。
はらいかわてつや