人を高く「評価」できれば物事はうまくいく
◎苦手な相手と無理なく良い関係を築く方法
人間というのは、少しでも嫌な部分があると、その人の全てを嫌いになってしまうものです。
これは、心理学用語で″ホーンズ効果″と呼ばれている現象で、
「音を立てて食べる」「ペン先を舐める」
など些細な点を見つけては、その人の全部が悪いかのように評価してしまいます。
経験上誰でも知っていることですが、相手をいくら悪く評価しても得られるものなど何ひとつありません。それどころか、相手を不機嫌にさせ関係を悪化させるだけです。
どんな人でも、「いいところ探し」をするのが良い人間関係を築くためのポイントです。
些細なところでいいので良いところを探して、「あなたの、こんなところが素晴らしい!!」と言ってあげるだけで、良好な人間関係を築くことができるのです。
「少し時間にルーズな面もあるけど、その分誠実に謝ってくれる」
「少しきついことを言うこともあるけど、裏表がないから信頼できる」
というように、長所に焦点を当てて見てあげるのです。
人から好かれる人は、自然にこういうことが身についているものです。
◎嫌いな相手ほど好意的に接しよう
ケネディ大統領が活躍していた時代、多くのアメリカ人はソ連の人々に敵対心を抱いていました。
ソ連は「嘘つき」「二枚舌」「詐欺師」というレッテルを貼り、ソ連がすることは全て悪く評価していました。まさに”ホーンズ効果”が生じていた状態です。
そんな中、ケネディ大統領は「相手を悪く見るのは止めにしよう」と提案しました。
ある大学の卒業式でケネディはこう述べています。
「政治や社会組織がどんなに悪くても、その国民が道義に欠けていると考えては
ならない。われわれは、アメリカ国民として、共産主義は個人の自由と専厳を
否定するので、深くいまわしく思っている。それでもなおわれわれは、科学と
宇宙開発、経済と工業の発展、文化や勇敢な行動の面などで、ソ連国民のあげ
た多くの業績をたたえることができるのである。」
(「今平和の戦略を求めて」1963年6月10日。アメリカン大学の卒業式で)
相手に嫌な部分があったとしても、認めるべき点はあり、相手に敬意を払う。人間としてそんな姿勢を持つことが大切であると述べたのです。
ケネディが尊敬するリンカーン大統領も、ケネディと同様に「相手のいいところ探し」を得意とする人でした。
リンカーンのことを嫌い「あいつは道化者のゴリラだ」と彼を中傷していたスタントンを、内角の要職に任命したり、「俺のほうがリンカーンより有能だ」と吹聴していたスワードを、国務長官に任命したりして国民を驚かせています。
このエピソードは、『人間の魅力』(ボブ・コンクリン著:創元社)に記されていたもので、とてもリンカーンらしい話です。
嫌いだからといって、その人を遠ざけるのではなく、嫌いだからこそあえて相手との距離を近くする。このリンカーンのやり方を、彼を尊敬していたケネディは真似したのでしょう。
心理学の研究においても、人のことを悪く評価する傾向のある人は、良好な人間関係を築くことが難しいというデータが多く示されています。
相手の良いところ探しを積極的にして、苦手な相手でもどんどん近付いていった方がいいのです。
リンカーンは「敵を倒すのではなく、敵と友達になろう!そうすれば、その相手はもう敵ではない」と話しています。そのような考えをもつ人間になることが理想的です。
はらいかわてつや